あなたと運命の番になる
病院に着く。ヒートのことなども考慮し、拓也の病院に搬送してもらった。

拓也も驚いた様子で出てきたが、蘭が特に痛がったりすることなく眠っている姿に少しだけ安心する。

「和真さん、ひとまず無事だったみたいでよかったです。蘭ちゃんはこのまま少しお預かりしますね。」

拓也はそう話して、処置室に眠ったままの蘭を運んだ。

待合の椅子に腰をかけると、蘭の母と瞬がやってきた。蘭の母には瞬が連絡を取ってくれていた。

「兄ちゃん、蘭ちゃんは?」

焦る様子の瞬と涙目の母に和真は立ち上がる。

「蘭さんは相手に襲われました。最悪の状況は免れましたが、彼女の心の傷を増やしてしまいました。お話を聞いていて、会社としても男としても守ると言ったのにこのようなことになってしまい申し訳ございません。」

和真は頭を下げる。瞬も続いて下げた。

「頭を上げてください。和真さんや工場長が良くしてくださっているのは蘭から重々聞いていました。母としては蘭にまた辛い思いをさせてしまったのは悲しいですが、番にならずにすんだことには少し安心しています。ありがとうございます。」

母も頭を下げる。

「蘭さんは今、処置室で症状を診てもらっています。大きな怪我とかはなさそうでしたが、ショックもあり、救急車の中で熱が出てきていました。心身の不調によってヒートが起こることも考えられそうだったので、この病院に運んでもらいました。」

「そうですか。ありがとうございます。」

母は心配そうに処置室を見つめた。
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