あなたと運命の番になる

発熱も翌日には下がり、幸いヒートも起こらなかった。
打撲はあるものの、肉体的には退院可能な状態となったが、やはり精神的ダメージは強かった。

あの時の光景が思い浮かび、苦しくなる。誰にも心配かけたくないが、時おり震えてしまう。

和真は仕事が忙しいながら、毎日会いに来てくれた。
蘭は和真が近くにいると安心出来る。和真と話すひと時は辛いことや苦しいことを忘れられた。


和真はある日、決意を胸に病院に行った。
病室の外で待っており、出てきた母に伝える。

｢この度はこのようなことになってしまって申し訳なく思っています。守ると言ったのに守りきれなかった。悔やんでも悔やみきれません。ただ私は、蘭さんを諦めることは出来ません。蘭さんと結婚したいと思っています。不甲斐ないと思われるかもしれませんが、もう一度チャンスを頂けませんか？｣

母は少し驚いた。御曹司のような彼がここまで蘭について頭を下げ、考えてくれていることに。和真は毎日来てくれていたし、今の蘭を1番笑顔に出来るのは間違いなく和真だと感じていた。

｢和真さんのせいだとは全く思っていません。むしろ和真さんがいたから、蘭を早く助けられて、最悪の状況にならなかったと思っており、感謝しています。
だけど、なぜ蘭なのですか？やっぱり番だからですか？貴方のような方が一般人の蘭にそこまで気持ちを示してくれることを少し不思議に思っています。｣

蘭の母は思っていたことを伝える。

｢番は本能的に惹かれ合うと聞いた事があります。そのため、番は全く関係ないとは言いきれないのかもしれません。ですが、私は蘭さんが優しくて、頑張り屋で相手のことを気遣える人だから、一緒に生きていきたいと思っています。番でなかったとしても、私は蘭さんを選びます。｣

和真の正直な気持ちに母は嬉しく思う。

｢私にとって蘭は自慢の娘です。そのように言っていただけることはありがたいです。
和真さんは将来、ヤマシロの社長になられる方なのですよね。蘭は社長の妻に必要な知識を持っていません。そのような教育を受けさせてきていませんから。それなのにいきなりそのような立場になって蘭は辛い思いをしないでしょうか？｣

母は不安事を尋ねる。

｢私は蘭さんが希望しない限り、ヤマシロの経営に関わってもらうつもりはありません。専業主婦になっても、今の仕事を続けてもらってもかまわないと思っています。ただ、やはりたまにパーティーなどに付いてきていただかないといけないことはあるかなと思います。ただ、その際は私が隣にいますので、なにかあってもフォロー出来るかなと考えています。｣

｢そうなんですね。あの、和真さんのご家族は蘭とのことに反対はされてないんですか？家柄同士の繋がりなどを気にされることもあるかなと思っていて・・。｣

母は心配そうに話す。

｢私は結婚相手は仕事に関わりなく選んでいいと言われています。両親も普通の恋愛結婚で、母は専業主婦をしています。父と弟はヤマシロの経営に関与していますが、姉はそういうことに興味はなく、美容師をしています。両親にはこの先も一緒にいたい女性がいるとは話していて、会いたいと言っています。｣

和真の誠実な解答に母は決意する。

｢わかりました。蘭のことよろしくお願いします。｣

母の言葉を聞いて、和真は深く頭を下げ、感謝を述べた。