あなたと運命の番になる
和真side

蘭には工場長に相談したなんて言ったが、あれは相談ではなく脅しだったなとニヤッと悪い目をする。

朝一番に工場長の部屋に行った。
初めは後輩らしく、昨夜の残業を告げ、残業手当の申請を頼んだ。

そうすると俺は頼んでないや、勝手にやったことに残業申請は受領出来ないなど、適当な言いがかりをつけられる。

結局、俺の目を見ることなく、話を終わらされ、俺はプチンとくる。



「工場長、私にそんな態度をとるなんて、随分偉くなられたんですね。」

和真はそう言って、変装のウィッグ、メガネをとる。

そして、鋭い目をして、告げる。


「お久しぶりです。工場長。
この工場の業務改善のため、参りました、山城和真です。
まずは現状把握のため、変装して仕事をしていましたが、酷いですね、この工場は。」


工場長は目を見開く。
左遷してきた仕事の出来ない後輩だと思っていた人物が、現社長の息子ではないか。
頭脳明晰、敏腕やり手だと有名な和真を見て驚きを隠せない。
そして冷や汗が出てくる。

「山城さんだったんですね。大変失礼しました。
残業手当はつけていただいてかまわな・・・」

バンっと和真が両手を机に置く。
そして冷たい目つきで見る。

「私が今、残業申請するとお思いですか?
残業申請の話は私が谷本でいるラストチャンスでした。
今からは山城和真としてお話させていただきます。」

和真は5つの条件を話す。
1つめは仕事のマニュアル化。
みんながそれぞれ自己流にやっている仕事が多いため、ミスがあり、コンベアがつまってとまり、業務が滞ることが多い。
そのため、仕事をマニュアルにまとめ、一元化することで仕事をスムーズに進められる。

2つめは職員の教育
自己流に仕事をしている人が多すぎる。一人一人が正しいやり方を理解し、仕事する。

3つめは生産目標の達成
今は赤字続きのこの工場をどうにか上向きにするため、生産目標を掲げる。

4つめは不当な残業をさせない。
仕方がない残業があった場合は必ず給料を払う。



「最後の5つめですが、これが出来なかった場合は即刻退職していただきます。」



「退職ですか・・・。それは困ります!私には妻も子どももいるんです。」


「ですが、今までの行いを訴えられた場合、辞職に追い込まれるのも時間の問題です。」

「困ります困ります。生活できなくなります。どうか退職だけは・・・。」

工場長の願うような表情を見て、和真は告げる。

「5つめですが、大黒さんに今までの行いを謝り、彼女の願いを聞き入れて下さい。」

「えっ。」
工場長は安堵の表情を浮かべる。
謝るくらいなら朝飯前だ。
大黒さんはあまり自己主張がない。
彼女にごめんなさいくらい言えばすぐに許してもらえるだろう。


和真は工場長のその表情が気に入らない。
謝るの意味を全く理解していない。おそらく口先で言おうくらいに思っていそうだ。
蘭はあまりに不当な扱いを受けてるのに、いつも優しく、頑張っている。
そんな人間に冷たい言動をしていたことが許せない。

「工場長、もし大黒さんが許さなければクビですよ。それに大黒さんの正当な願いを1つでも拒否すれば、私の独断で退職してもらいます。
謝罪は私のいるところで行ってもらいます。
大黒さん次第であなたは明日から仕事を無くすということを忘れないでください。」

キツめに言い放つ。

工場長の表情が再度こわばったのがわかる。

「ではお昼休憩に伺います。
あと、私はまだ谷本として働き、工場の改善に努めます。この工場で私が山城だと知っている人間はあなた一人です。にも関わらず、もし私が山城だとバレた時は・・。
それ以上は言わなくても分かりますよね?
では失礼します。」

和真はおじきをして、部屋を出る。

工場長は閉じられた扉をみつめ、震えが止まらなかった。

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