ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 選ぶのを手伝った商品はどれも気に入ってくれたようだし、それでよしとしておこう。
 店の前にやってきた馬車に乗り込もうとしたエルドリックだったが、そこで足を止めた。

「ミア嬢――いや、アウレリア・デュモン侯爵令嬢」

 本名を呼ばれ、アウレリアは目を見開いた。
 今まで、誰にも気づかれたことはなかったのに。やはり気づかれていた。思わず一歩、後退しようとしたらエルドリックに腕を掴(つか)まれた。

「正体に気づいているのは、俺だけだ」

 そう聞かされたところで、身体から力が抜けるわけではない。顔を引きつらせたまま、エルドリックを見上げる。

「正体をバラされたくなかったら、俺と話をしてくれ。ふたりで、ゆっくりと話せる場所で」

 アウレリアは唇をかんだ。
 彼がなにを話そうとしているのかわからないのは不安だが、それ以上に話の内容を聞かないまま放置しておくのはまずい。

「……かしこまりました」

 小さな声でそう言えば、腕を掴んでいた手が離される。

「いつならいい?」
「明後日の午後と四日後の午後でしたら」
「場所と時間を決めたら連絡する。ノクスに手紙を出そう」

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