ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 美しい緑色の翡翠はこの大陸では珍しい。粒は小さいが、色はいい石を選んで髪飾りに使っている。

「珍しくていいな。これをもらおう。翡翠を使ったブローチはあるか」
「揃いのものがございます」
「では、それももらおう。それから、ノクス商会のレースは素晴らしいと聞いた。何枚か見繕ってくれ」
「かしこまりました」

 職人が一年かけて編み上げるレースは、非常に高価なものである。それをあっさり「何枚か見繕って」と言えるあたり、土産を渡そうとしている相手をとても大切にしているのだろう。
 このようにして、エルドリックの求めに応じて、いくつかの品を選び出す。商品にも飲み物にも満足した様子のエルドリックは、支払いは、商品を届けた時にすると言い残して立ち上がった。

「ミアとやら、見送りを頼めるか――ああ、この者だけでいい。いい取引だった」

 ノクスが続いて立ち上がろうとするのを、手で制す。

(やっと終わった……!)

 見破られていない自信はあったものの、隣国の王太子をおもてなしするなんて考えたこともなかった。しかも、ノクス商会の店舗で。
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