移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 リリィの肩に顔を埋めていたユリスは顔を上げ、リリィを自分の方へ向かせた。そしてリリィの両頬を優しく掌で包み込む。

「ねえ、今回のこと、もしかして自分のせいって思ってない?自分がいなければ、って思ってたりしない?」

 じっとユリスに見つめられながらそう言われ、リリィはウッと息を詰まらせる。どうしてユリスは思っていることがわかってしまうのだろうか。

「いい?紅い雫を持っていたのはリリィだし、レインに狙われたのもリリィだけど、だからといって全てがリリィのせいじゃない。リリィのせいなわけないだろ」

 少しだけ手に力を入れて、むぎゅ、とリリィの頬を優しく潰す。リリィは困った顔でユリスを見つめた。

「自分ではどうしようもないことは仕方ない。でも自分でどうにかできることは精一杯やってきた。みんな自分で考えて自分で行動したんだ。だから、誰もリリィのせいだなんて思ってない」

 ユリスは手の力を緩めて優しくリリィの両頬を撫でた。

「俺はこうしてまたリリィに触れれることが嬉しい。リリィが攫われたときは本当にどうしようかと思った……リリィが無事なことが嬉しいんだ。こうしてリリィがそばにいて、俺の目の前で笑ってくれることが俺にとっての幸せだから」

 そういって優しく笑うユリスを見て、リリィは胸が苦しくなる。だがその苦しさは辛い苦しさではなく、愛おしさが溢れてとまらない幸せな苦しさだ。

「……私、こんなに幸せでいいんでしょうか」

 困ったように言うリリィに、ユリスは笑って言った。

「いいんだよ。俺も幸せすぎてどうしようって思うけど、これからもっともっと二人で幸せになるんだから」

 ユリスの言葉に、リリィは幸せそうにふわっと笑った。

「そうですね、二人でもっともっと幸せになりましょう」

 その返事を聞いて、ユリスは満足げに微笑み、リリィへ顔を近づけてそっとキスをした。

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