『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
「私たちは岩手へ移住しなければいけないんですか?」
 経理担当役員だった。
 返事によっては去就を考えなければならないというようなニュアンスを感じた。
 すると、東京の二人と岩手の既婚者が役員の質問に同意するように頷いた。
「いや、東京の拠点は残します。支社として存続させます」
 固唾を呑んでいた五人が一斉に息を吐いた。
 安堵の息に違いなかった。
 すると、間を置かずに「乾杯しましょう」という声が聞こえた。
 岩手のリーダー格社員で、すぐさまグラスにビールを注ぎ始めた。
 呼応するように東京の四人のグラスにもビールが注がれた。
 
「準備はよろしいですか?」
 リモート画面の中の岩手の社員が東京本社を覗き込むような仕草をして笑いを誘った。
「社長、乾杯のご発声をお願いします」
 リーダー格社員に促されて男はグラスを手にした。
 そして、全員のグラスにビールが注がれているのを再度確認してから、グラスを高々と掲げた。
「10周年おめでとう。そして、新生YOUR DREAMの門出を祝って、乾杯!」
 東京と岩手の11個のグラスが笑顔と共に高々と掲げられた。


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