『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 素敵なピアノの調べに包まれました。
『YOUR SONG』です。
 CDの裏表紙には『僕の歌は君の歌』と記されていましたが、ユア・ソングのままでいいのに、と勝手にダメ出しをしながら唐揚げを頬張りました。
 やっぱりお肉は美味しいなと思いました。
 次はウインナーを口に入れました。
 一口サイズでしたが、唐揚げとは違う肉の旨味にじわ~っと感動しました。
 そして、コロッケ。
 メンチコロッケなら最高だったのですが、残念ながら男爵芋コロッケでした。
 でも、脂がしつこくなくて美味でした。
 ご飯と合わせてゆっくり噛みしめていると、曲が変わりました。
『愛はきらめきの中に』
 原題は『HOW DEEP IS YOUR LOVE』
 これは邦題の勝ち! 
 判定を告げながら、四角い形の玉子焼きを半分かじって甘味に酔いしれました。
 
 次は焼き鯖にいくか、キンピラにいくか、暫し悩みましたが、キンピラにしました。
 主役の前には露払いが必要だからです。
 ちょっとピリ辛のキンピラでコロッケの脂を落としたあと、焼き鯖をかじりました。
 普段はそんなことはしないのですが、今日は特別、と言い訳をしてしまいました。
 歯形が付いた焼き鯖を見つめながらご飯と共に噛みしめると、鯖の旨味がじわ~っと口の中に広がりました。
 肉もいいけど魚もいいのよね、と呟いてしまいました。
 
 口福に包まれていると、次の曲が始まりました。
『GEORGIA ON MY MIND』
 邦題は『わが心のジョージア』
 これは引き分け。
 判定を下してから弁当を見ると、ご飯が三分の一残っていました。
 正確に言うと、残しておいたという方が正しいのですが、最後は梅干しで〆ると決めていたのです。
 ご飯の真ん中に大粒の梅干しを1個を乗せてから、シソを箸でつまんでご飯の上をなぞりました。
 ご飯が薄紫に染まった瞬間、口の中に唾液が湧き出しました。
 それを見ていると、〈パブロフの犬〉が脳裏に浮かびました。
 条件反射に促されて、シソとご飯、梅干しとご飯を口に入れました。

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