悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 本来なら何人もお客を取るのだが、初日だということと、何よりルミール様が連戦を希望したことで私のデビュー日は終わってしまった。
 いや、今日だけではない。

「サシャ。今日もいいだろうか」

 扉の前に笑顔で立っているのは紛れもなくルミール様である。
 
「なんっで毎日来るの……!?」
「そんなの、サシャに会いたいからに決まっているだろう」
「会いた……!?」

“い、いえ騙されたらダメよ、この会いたいは練習を積みたいって意味なんだから!”

 じわりと熱くなる頬を両手でパシンと叩き、じっと彼を見つめると、もう慣れた様子で部屋へと入ってくる。

「これ、公爵家から持って来た花なんだ」
「わ、ありがとうございます」

 にこりと微笑みながら渡されたのは可愛いオレンジ色の花。
 先代公爵の奥様の庭園で見た花と同じで、あの庭の美しい光景を思い出しうっとりと目を細めてしまう。

「ここはまだ飾りが少ないからな」

 まるでこの部屋が私の私室であるかのように、自然といつか何かを飾ろうと置いておいた花瓶を持ち上げたルミール様が、サイドテーブルに花瓶を置き私を手招いた。

“活けろってことかしら”
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