悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 はぁ、とため息を吐いた私は、酒屋がある路地に背を向け反対側にある中央地区にある噴水広場へと足を進めた時だった。

 輝くような黒髪にがっしりとした体躯。
 質の悪い服すらまるで高級な服に見えるほどの着こなしをし、庶民に馴染むどころかある意味完璧な『お忍びルック』の青年。

“る、ルミール様!?”

 まさかそんな、と動揺しつつ視界の端に見えたその姿を振り返ると、本当に彼の姿があって驚く。
 少し距離が離れていたことと、買ったばかりのショールを日よけがてら頭から被っていたため私には気付かなかったようだ。
 
 まさかこんな場所で彼を見かけるとは、と思わず目が釘付けになっていると、彼の隣に誰かがいることに気付く。

「あれって」

 スラリと高い背に細い腰。
 栗色のストレートの髪を高い位置でひとつに結んだその女性は、女性にしては珍しく乗馬服のような脚にフィットしたパンツスタイルで、ルミール様と同じく庶民服を着ているにも関わらず美しく格好良かった。
 
“あの人がお見合いをした相手ってこと?”

 令嬢とだとこのデートは参考にならないかも、なんて思いながら楽しんだデート。
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