悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 確かに意図的に省いていた自覚があったので思わず目を泳がせてしまう。

「恋人や夫婦が、愛を確かめ合うためのものだから、です」
「?」
「行為自体へは直接関係ないのであえて入れなかったのです」

“う、嘘は言ってないわ……!”

 依頼された仕事内容は『処女相手に初夜を出来るようにすること』であり、『愛し合う夫婦を作ること』ではない。

 よって、これでこの話は終わらせられる。と、思ったのはどうやら私だけだったらしい。

「だが、気持ちを盛り上げ行為へ移りやすいように、とも言っていたな」
“言った!”

 秒速で墓穴を掘ったことに気付いた私へと一歩彼が近付いてくる。
 そして彼の手のひらがそっと私の頬へと触れた。

「なら、口付けも練習すべきではないか?」

 ジッと真剣な彼の瞳が私を射抜くように見つめ、ごくりと喉が鳴ってしまう。
 
「……ご、希望、なら……」

 結果、私の口からは弱々しくそんな言葉が出たのだった。
 
 ◇◇◇

「こんな場所があるのか」
「狭いですが、一応清潔ではありますので」

 流石に外で練習する訳にはいかず、向かったのは小さな酒場。
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