父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

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おすみの故郷(くに)は秩父で、水呑(みずの)み百姓の家に生まれた。

父も母も夜明けから日が沈むまで畑仕事をして、日が暮れてからも夜なべして働けども、負い目(借金)ばかりが膨れ上がり、ついに娘を女衒(ぜげん)に売ることになってしまった。

田舎ではなかなかの器量良しと云われていたおすみは、吉原の大見世「久喜萬字屋(くきまんじや)」に連れてこられた。

されど、久喜萬字屋ともなればおすみほどの器量良しなぞ掃いて捨てるほどいる。

ゆえに、おすみは通りに面した張見世(はりみせ)に座って客引きをし、客がついたら廻し部屋と云う大部屋で春を売る、見世では底辺の「女郎」になった。


廻し部屋では仕切るための屏風が置かれ、その陰で各々(おのおの)の女郎が各々の客に春を売る。

さらに、せっかく引いた客であっても決まった(とき)が過ぎれば帰らされるため、また張見世に出て客を引かねばならない。

よって、一晩で何人もの客を相手にした。


さような荒んだ暮らしの中で客としてやってきたのが——御武家崩れの山口であった。
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