さようなら
色とりどりの光
「ねぇ、ねぇ、敬太!

クリスマス、ディズニー行こうよ!」


「え? クリスマスは

すごく混んでるだろ?」


僕は少し冷たい口調で

言ってしまった。


「混んでてもいいの…

敬太と二人で

雰囲気を感じられればいいの…」


「でも、折角なら

色々乗りたいでしょ」


僕はなんて馬鹿なんだろう。


更に追い討ちをかけるように

言わなくてもいいのに。


「そうだけど…」


紗江は下を向いてしまった。


僕は紗江の顔を覗き込んだ。


紗江は涙を浮かべていた。


「ごめん…

クリスマスにディズニー行こう」


「行きたくないんでしょ…

他の時でいいよ」


こう言われると困ってしまう…


「クリスマスに行こうよ。

ごめん…」


「うん…」


はぁ… 良かった…


「行きたくないって言ったじゃん」


なんて言われたら、

また困ってしまう。


毎回こんな感じで

会話に困ってしまう。


お互い、まだまだ未熟なんだよな…




「敬太、今日うちで

夕食食べていかない?

お父さんが昨日から出張でいないの」


「いや… でも…」


「お母さんに敬太を

夕食に誘うように言われたの」


「そうか… それなら…」


僕は紗江の家に

寄っていくことにした。


この辺りは静かな住宅街だ。


並んでいる家は

ごく一般的な家だ。


その中に一軒だけ

この風景に似つかわしくない

家が建っている。


それが紗江の家だ。


ディズニーランドにある

シンデレラ城みたいな家だ。


この大きい家に

家族三人で住んでいるとは…


使っていない部屋の方が

きっと多いだろう。




< 1 / 66 >

この作品をシェア

pagetop