魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 額を扉に押し当て、懇願するフィトロさんの態度にも、リラフェンが応じる気配はない。重たい沈黙が続き……やがて、彼は扉の前で握りしめていた拳を力無く下ろした。

「すみません、サンジュ。今の妹は僕と話すつもりはないらしい……。しばらくしたらまた様子を見に来ますから、彼女の面倒を見てあげて欲しい。よろしく、お願いします……」
「それはもちろんですけど……」

 フィトロさんにはこちらに来てからも色々とお世話になっているし、そうでなくても大切な友人が苦しんでいるのだ。体調がよくなるまでできる限り看病はするつもりだが……。
 私は迷いながらも、彼を玄関に送っていく途中で、思いきって聞いた。

「あの……フィトロさん、事情を話してもらうことはできませんか?」

 心の問題だとしたら、いくら体が元気になったところでリラフェンに安らぎは訪れない。私は彼女が辛い気持ちで過ごすのを黙って見ていたくはなかった。
 そしてリラフェンが自分で話してくれない以上、彼に尋ねるしかない。
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