魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 青、赤、黄……このくすんだ、灰色の瞳が映してくれた、様々な彩り……。

 忘れようもなく心に刻まれていった数多くの出来事……ううん、それだけじゃない。
 こうしたなんでもない街の風景も、刻一刻と変わりゆく日々も、何者にも代えがたい大事な人たちも……きっと、世界がひとりぼっちで生まれて来る私たちに贈ってくれた今限りの贈り物。
 それらを私はもっと噛み締めよう……。たとえここを去る時が来ても、今までの素敵な出会いに感謝し、堂々と誇れるように。

 それを誰かが見てくれていたなら、感じた想いを心に混ぜて、ここまでたくさんの人たちが描いてきた世界(キャンバス)に、自分なりの絵の具で色を足してゆく。

 そうして起きた変化がきっと、いずれ誰かにとっての新しい夢を生み出してくれるはずだから――。

 視界に映るファルメルの街並みに散らばっていた、いくつもの小さな黒い点。その内のひとつがこちらへ近づき、色が滲み出すように次第に形を変えた。リラフェンたち家族と、そして、私から生まれてきた小さくて温かい、不思議な命。
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