ショパンの指先
スナックで働き、客と色恋沙汰になって揉めることも多々あり、店を転々としていた。家に帰ったら、母が知らない男と寝ていたなんてこともある。

それに、私が中学の頃、母は私の同級生のお父さんにまで色目を使い不倫をしていた。ただでさえ水商売の娘と罵られてきたのに、この一件が学校中に広まって酷いイジメを受けた。

母のようにだけはなりたくない、そう思って育ってきた。私が水商売にだけは手を出さないようにしているのも、母のようになりたくない気持ちが強いからだ。

唯一の心の支えを失ったのは、高校2年の秋のことだった。

酔っぱらって帰ってきた母は、長年秘密にしてきたことをあっさりと口にした。

「あんたのお父さんはね、本当は生きているの。でも不倫だったから認知してもらえなかったのよ」

 その日の母はやたらと上機嫌だった。私は衝撃的な言葉に動揺しつつも、冷静に質問した。この機会を逃したら、真実を聞くことはできなくなるかもしれないと思ったからだ。

 動揺しつつも母から聞き出せたのは、父との出会いは高校3年の時で、先生と生徒でありながら関係を持っていたらしい。父は音楽の先生だった。(これは嘘ではなかった)

 卒業してからも関係があり、そして私を授かった。

妊娠すれば奥さんと別れて結婚してくれると思ったのに予想が外れたらしい。

父は英雄ポロネーズが好きだったのは本当?と聞いたら「何それ。そんな曲知らない」と言われた時は、絞め殺してやろうかと思った。

数日後、私はその当時母と恋人関係にあった男と寝てやった。その時私は処女だったけれど、そんなことどうでも良かった。母はその男にベタ惚れだったのを知っていた。だから寝てやった。
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