クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
「……ごめんなさい。良い返事ができるかどうかは……」


「そ、それ以上、今は言わないで下さい。お願いします」


「う、うん」


頬を赤らめ、照れながら告白してくれた航輔君には、私なりに正しい言葉を選んで誠実に答えたいと思った。


航輔君と別れ、自分のデスクに座った途端、頭の中にふと拓弥さんが現れた。


拓弥さんへの想いは、間違いなく「恋」という感情だ。
だけど、この一方的な気持ちを拓弥さんに押し付けるわけにはいかない。


つまりは一生、片思い――


拓弥さんの気持ちを知ってしまえば、きっと落ち込むのはわかっている。だけど、ほんの少しだけ心を覗いてみたいと望む自分は、バカで厚かましいのだろうか。


恋が成就しないからといって、簡単に航輔君に気持ちを移すことはできない。


でも……
私だって少しは幸せになりたい……


さっきからずっとおさまらない胸の鼓動。
どうすればいいのかわからないまま、何とか自分を落ち着かせようと努力して、私は仕事の資料に手を伸ばした。
< 118 / 278 >

この作品をシェア

pagetop