クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
拓弥さんは優し過ぎる。
恥ずかしげもなく泣きじゃくる私のことを、この人はどう思っているのだろう?
こんなバカな女だとは思わなかったと呆れているのだろうか?
情けないと叱られるのだろうか?
それとも、もう二度と会わないと、突き放されるのだろうか――


止めたくても止まらない涙が洪水のようにとめどなく流れ、拓弥さんが着ているワイシャツとネクタイを濡らす。
弁償なんてできないくらい高価なものかも知れないけれど、今の私には配慮などできなかった。


ただ、こうして泣いているだけの、2人だけの時間が過ぎていく。
静寂の中に響くのは、情けない私の泣き声だけ。


拓弥さんは何も言わず、泣かせてくれている。それをいいことに、私は何て厚かましい女なんだろう。


だけど、お願い、あと少し……
もう少しだけ……
このままでいさせて下さい……
< 136 / 278 >

この作品をシェア

pagetop