クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
瑠香だ――
どうして瑠香が拓弥さんの部屋に?


「このままやり過ごそう」


「……あ、でも……」


「ん?」


「あっ、あの……。で、出て下さい。何か大事な用かも……」


本当は出てほしくない気持ちがあった。
でも、心が揺さぶられるくらいの胸騒ぎがして、私は瑠香がここに来た理由を知りたくなった。


「……わかった」


拓弥さんは、インターフォンに近づいてボタンを押した。


『佐和田です。桐生課長に食べてもらいたくて「おでん」を作ってきました~。一緒に食べませんか?』


瑠香もおでんを?


「……悪いけど、今、来客中なんだ」


「えっ、こんな夕食時にどなたなんですか?」


瑠香の声が怖い。
一瞬にして、頭が真っ白になる。


「……」


「なぜ黙ってるんですか? え、待って、まさか詩穂?」


心臓が「ドキッ」と鳴る音が聞こえる。
拓弥さんは、私を見て心配そうな顔をした。


「……申し訳ないが、今、忙しいから帰ってもらえないか?」
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