クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
桐生さんの秘密?
それを私に教えてくれるの?


「も、もし、見せて下さるなら……」


「丁寧な敬語を使う俺も、無口でクールを気取っている俺も、本当の俺じゃない。俺は、普通。丁寧で優しいわけでもないし、厳し過ぎるわけでもない。いたって『普通』の人間なんだ」


敬語が無くなり、急に表情が緩んだ。
同時に私まで肩の力が抜けた気がした。


「普通……?」


「ああ」


「普通ではないと思いますが……」


「普通だよ。桐生グループの一人息子だとしても、俺は肩書きに左右されない1人の人間としての『桐生 拓弥』でありたい。そう思って生きてきた。でも、世間はいつだってそれを許してはくれなかった」


「桐生さん……」


ただの凡人にはわからない、桐生さんなりの苦労があったんだろう。そのくらいは、私にもなんとなく想像することはできる。
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