クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
ダメだ――


瞬間的に、私の中にある変なスイッチが入った音がした。
あれだけ調子に乗ってはいけないと、自分に言い聞かせていたのに。


「拓弥さん」


「ん? 何? ちゃんと聞こえない」


大音量の音楽が私の声をかき消す。
私は、背伸びをして、長身の拓弥さんの耳元にできるだけ近づいて大きな声で言った。


「拓弥さん! 素敵です! すごくカッコいいです!」


とても恥ずかしい言葉。
私は何を言ってるのか――


「……あ、ありがとう」


拓弥さんの言葉、口の動きでよくわかった。


「今日、一緒に来れて良かったです!」


「ああ、俺も」


「楽しいですね!」


「楽しいな、本当に」


「……だから、その『楽しい』じゃないんですけどね。……まあ、いいです……」


「ん? 何? もう一回言って」
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