【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「だけど、ファッションセンターウエムラなのは本当なの。ダメかしら」
 ショートカットの女性が服をつまんでため息をつく。

「いえ、素敵です。私もよく行くんですよ。お手頃でかわいいのが多くていつも買い過ぎてしまいます」
「あら、そうなの?」
 答えるショートカットの御婦人はなんだか嬉しそうだ。

 会話をしながら、柚花は指輪を確認していた。石のついていないゴールドの指輪で、植物の模様が刻まれている。

「素敵な指輪ですね」
「古いけど大事な結婚指輪よ。イタリアの職人が作ってくれたの」
 ウェーブボブの御婦人が答える。

「だからアカンサス模様なんですね」
「あら、よく知ってるわね」
 御婦人は満足そうに微笑した。

 アカンサスは地中海が原産の植物で、ヨーロッパではアカンサス模様は古くから多用され、愛されている。

「ありがとうございます。結婚指輪がゴールドなのは珍しいですね」
「私はゴールドが好きだから、夫がそうしてくれたの」

「素敵な旦那様ですね」
「私の指輪もやっていだだけるかしら。」
 隣のショートカットの御婦人が言い、緑色の石のついた指輪を柚花に見せる。
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