【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「もしかしてエメラルドですか?」
「そうなの」

「申し訳ございません、こちらは超音波洗浄機にかけることはできません。エメラルドは脆いので、割れる原因になってしまいます」
「あら、そうなの?」
 残念そうに婦人が言う。

 いつもは商品を見ていただいてる間にクリーニングのサービスを行うが、今回は少し状況が違うため、柚花は超音波洗浄機にかけている間、婦人方の待ち時間をつぶすために会話を続けた。

「エメラルド以外にもトパーズやムーンストーン、真珠や琥珀なども超音波洗浄機はダメなんです。大丈夫な宝飾品でも機械に掛ける前にブラッシングが必要なものもありまして」
「超音波洗浄機って意外に使えない気がしてきたわ」

「実を言うと、私もときどきそう思うんです。本社には言えないですけどね」
 こっそり秘密を共有するように言うと、二人はくすくすと笑った。

「でも、こんなに大きくて傷の少ないエメラルドをお持ちなんて凄いですね」
 エメラルドはそもそも内包物が多く、傷がないものはないとも言われている。市場に出回っているものは傷の処理をされたあとのものが多い。

「ありがとう、旦那からのプレゼントなのよ。エメラルド婚式でね」
「ということは結婚五十五年をお迎えなのですね。素敵です!」
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