眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 フェインは一瞬驚愕したが、すぐにいつもの無表情に戻ってレイナーを見た。

「なんですか、その噂。初めて聞きましたよ」
「ほう、ヴェルデの一番すぐ近くにいる君がその噂を知らないだなんて逆に不思議だな」

 フェインを見下ろしながらレイナーは低い声でそう言い放つ。その風格は威圧的で恐怖さえ与えかねない。だが、フェインはローラを庇うようにして立ち、首をかしげた。

「確かにローラは隣国からヴェルデが連れてきた令嬢ですが、そんな噂は知りませんね。その噂を聞いて、ローラにわざわざ会いに来たのですか」
「それもあるが、我が国の筆頭魔術師の新妻に、騎士団長として挨拶をしないのはおかしいだろう。婚約者時代に開かれたティアール国との懇親会には任務中で出席できなかったからな」

 レイナーの話に、ローラは微笑みながら口を開く。

「そうだったのですね。わざわざご挨拶いただきありがとうございます。むしろ、サイレーン国の騎士団をまとめるお方にはまずこちらからご挨拶に伺うべきでした。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。この国に来てから社交の場に出るのがまだ二回目なので、ご容赦ください」

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