ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「さて。今日はもう店じまいなので、三人でゆっくり飲みましょうか」

 ガクくんの頭をぐりぐり撫でまわして、マスターが言った。

「いいんですか?」
「たまにはいいでしょう。今日の仕事は終わりです。ほら、ガクも泣き止みなさい」
「ふぁい……」

 ガクくんが鼻をすする。さっきは大人っぽかったのに、やっぱりいつものかわいいガクくんね。

 三人で店内へ戻って、マスターとガクくんが閉店作業をするのを見守りながら、残りのブランデーを味わった。

「彩女さん。次はウイスキーにしますか?」
「はい。お願いします、涼介さん」

 あ、しまった。ついつい名前で呼んでしまった。マスターが、少し目を丸くしている。

「あ、あの、すみません。いつもガクくんがそう呼ぶので……」
「あはは、謝らないでくださいよ。ぜひそう呼んでください。家族みたいなものでしょう」
「そうだよ、彩女さん。僕の叔父さんなんだから、家族でしょ」

 横から、ガクくんが嬉しそうに笑顔を見せる。
 家族か……なんだかちょっと、くすぐったい。

「それじゃあ……今夜はマスターと客じゃなくて、家族として一緒に飲みましょう、涼介さん」
「もちろんです」

 ウイスキーのボトルを出しながら、涼介さんが微笑む。
 それから、ガクくんの子どものころの話を肴にしながら、心ゆくまで美味しいお酒を味わった。
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