nonsense magic
4 彼女
◆
''周りのやつらを信用するな''
───────あの言葉の''真意''を、ずっと考えている
「……どっか出かけんの?」
「っ!」
背後からかけられたかすれ声に、''彼''はたった今起きたのだと悟る。
鏡越し。仄かにゆるめられた瞳と目が合う、……なんだか後ろめたい気持ちに襲われて、そっと視線をそらした。
「おはよう、きりくん」
「……おはよ」
ゆるいスウェットに身を包んだきりくんが、くわ、と眠そうに欠伸をこぼすから、つられるようにわたしも表情を緩ませる。
眠りが足りないと言わんばかりに下げられた目尻に、ところどころ跳ねた猫っ毛。
……すっかり慣れてしまった、朝の光景。
「朝ごはん用意できてるよ」
「……味噌汁、あさり?」
「、はずれ。しじみです」
きりくんの好物であるお味噌汁の具を考えるのが、最近のひそかな楽しみになっている。もっとバリエーション増やしてみるのもいいな、……と、それは一旦置いておいて。
「夕方くらいまでには、帰るね」
アイロンで整えた前髪を鏡でチェックして、くるりと背を向けようとすると。ぎゅ、と後ろから伸びてきた手に腕を掴まれて、きりくんと正面に向き合うような体勢になる。
……きりくん?
「おれの質問の答えは?」
「……?」
「どっか出かけんの、って聞いたろ」
きりくんはわたしの全身に視線を落として、ぱち、ぱち、と瞬きをこぼす。声色はいつもと変わらないのに、なぜか咎められているような気持ちになって、あわてて口を開く。
「ちょっと買い物、に。電車で、隣駅のショッピングーモールに行こうかなって。……あ、きりくん何か必要なものとかあったら買ってくるよ……?」
急かされている訳でもないのに、自然と速まる口調。
言葉を紡ぐ度に、きりくんの無表情度が増していく。すう、と静かに細められる瞳に、すこし萎縮してしまう。