nonsense magic
「荷物ひとりで持てんの?」
「……うん」
「何買うの」
「日用品とかキッチングッズとか、……あと、服を、すこし」
だんだんと言葉尻がしぼんていく。会話の流れ的に、きりくんも一緒に……って、こと?
でも、わたしの都合にきりくんを連れ回すのも申し訳ないし、それに─────
「ほんとに大丈夫、……いってきます」
ここはもう強行突破しかない、とすこし強気に行動してみる。掴まれている腕に力を入れ、やんわりとそれをほどいたら、そのまま背を向けた─────はず、だったのに。
「っ、!」
首に片腕を回されて、ゆるい力で引き寄せられる。はずみにふわりと揺れる黒髪が耳元を擽るから、一瞬フリーズしてしまう。
隙を逃さないと言わんばかりに落とされるのは、囁くみたいなテノール。
「10分」
「………、っ」
「待て、──……ね?」
じわり、威圧感の滲んだセリフ。
……誘われるように、無意識に頷いてしまって、しまった、とおもった時には、もう遅かった。