nonsense magic

5 正しくなれない



:


ほんのりと甘みを含んだ''それ''に、微かに目元が緩む。傷つけないように、そうっと袋のなかから取り出して、指先でやさしく撫であげれば、ふわ、とまた甘い香りが鼻を掠めて……と、そんな一連の動作を繰り返していれば、後ろのソファがぎしりと軋む。



「────……ドライフラワー、」


手元を覗き込まれ、きりくんの猫っ毛が肩を掠めるようにふれる。毛先はまだすこし濡れているけど、前みたいに水滴がぽたぽた垂れているわけじゃない。


あの日から、ドライヤーで乾かしてくれているらしい。



「ボトルフラワー、だっけ」

「うん。……やっぱり、すごく綺麗」



ショッピングモールの雑貨屋さんで見つけたもので、あまりの可愛さに衝動買いをしてしまったのだ。


ラベンダーにスターチス、やわい白を纏ったかすみ草、全体的にパープルで統一されたそれらが、透明なガラスのボトルに閉じ込められている。


「生花からつくられてるから、匂いも残ってるの」


ボトルの蓋を開けてきりくんへと手渡せば、ほんとだ、と微かに表情をゆるめたきりくんは、やわらかい眼差しを浮かべながら淡い色の花びらにふれた。


そんな横顔を眺めていると、無意識に表情がほころんで、見守るように目を細めてしまう。


……きりくん、お花好きなのかな。


「(もし、そうなら……うれしい)」



同じだ、……なんて、まだわからない共通点を見つけて喜んでいるわたしは、側から見たら呆れられてしまうくらい、単純で簡単な人間かもしれない。


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