冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
 咲穂も彼に賛成だ。ふたりの出演するCMは発売前のひと月だけ、集中的に流すもの。あっという間に終了するからこそ、変化球をおもしろがってもらえるのだ。

「う~ん、まぁそうね。蓮見リョウの人気は絶大だし、彼と長期契約を結べるのはうちにとっても魅力的な話よね」
「そうですよ! 企画案も素晴らしいし、私も今から楽しみです」

 メインCMに起用するのは人気・実力ともにナンバーワンの俳優、蓮見リョウに決まった。共演者はまだ検討中だけれど、とてもいい企画に仕上がっている。

「そうね、絶対にリベタスを成功させましょう」
「はい!」

 そこで、理沙子はふふっと頬を緩めた。

「そうそう。会議中とかはダメだけど……こういう雑談の場では遠慮せずに『櫂さん』って呼んでいいからね」

 語尾にハートマークがつきそうな口調で、彼女は咲穂にウインクを送ってよこす。

「や、えっと……大丈夫です。仕事とプライベートは別ですから……」

 オタオタする咲穂を見て、理沙子はにんまりと笑った。

「いいわね~、新婚さん! 私もたまには夫をデートに誘ってみようかしら?」
「あはは」 

 咲穂の笑い声は乾いている。

 ふたりの結婚がただのビジネス婚であることは、誰にも内緒の極秘事項だ。感情がすぐ顔に出てしまう咲穂は、櫂の言うとおり演技下手。バレやしないかと、ヒヤヒヤしながら会社生活を送っているのが現状だった。

 そのうえ、咲穂を悩ませる〝妻のお仕事〟は次から次へとやってくる。

『業務時間が終わったら、地下の駐車場で待ち合わせしよう』

 朝の櫂の台詞を思い出して、咲穂は小さくため息をついた。
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