第一幕、御三家の桜姫


「何の衣装でもちゃんと着るよ。ちゃんと遼くんの良いところアピールしてくるよ。日頃のダサイ服装からの変身ってギャップの成果を狙ってくるよ。蝶乃さんのカップルなんて二番以下に甘んじさせてみせるよ。……それで、透冶くんのことをちゃんと暴かせてあげるよ」


 足は力の入れ方を忘れたりなんかしていない。松隆くんの腕から離れて一人で立って、決意を(あら)わにするようにその顔を見上げた。松隆くんはちょっとだけ面食らったような……意外な強さを見せられたような顔をしていたけれど。


「……助かるよ、桜坂。それでこそ、俺達が見込んだ下僕だ」


 すぐに、それは不敵な笑みに変わる。


「桜坂の体調とは別に、準備を充分に整えるために笛吹には順序の変更を申し出てくる。そうすれば、登壇するのは一時間後でいい。ただし、引き換えに順序は一番最後になるだろう――この場合、観客の前に立つ時間が一番短いからその意味では不利だ」


 優勝候補――蝶乃さん達の組に上書きする印象を与えなければならない。


「でも俺としては、時間を捨てても準備を取った方がいいと思う。何よりも“姿”を観客は一番見ているものだし、時間なんて工夫で長くも短くも使える。いい?」


 準備は万端に整えろ、そしてその分短くなったアピールタイムは要領よく取り戻せ――思わず笑い出してしまいそうになるほど横暴な命令だ。それができるかは分からないけれど、御三家が私に下す命令はいつだってそんなこと関係ない。生徒会室に忍び込めと言われたときからそうだ。


「かしこまりました、リーダー」


 できるかできないかかじゃなくて、やるかやらないか、だから。

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