拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない
 ただでさえ彼は、人目を引く魅了的な容姿の持ち主だ。それを今日、この半日だけでありありと実感した。

 西洋人の観光客に埋もれることのない長身に、目鼻立ちのはっきりした甘い顔立ちで、芸能人のお忍びと思われていてもおかしくない。
 それなのに当の本人はまったく我関せず。常に私にぴたりとくっついている。

『あんなに素敵な男性の隣に、あんな地味な子がいるなんて』

 口に出すか出さないかの違いはあれど、皆同じような感想を視線にのせて寄こす。

 そんなこと、私が聞きたいくらいだわ。

 半日たって慣れてきた――というより諦めがついた。
 とはいえ、嫉妬と羨望に満ちた視線を浴び続ける私の身にもなってもらいたい。
 
恨めしい気持ちを込めて整った横顔をじっと見つめていると、視線に気づいた彼がこちらを見た。

「ごめん、美緒」

 やっと私の気持ちをわかってもらえたのかと、期待した次の瞬間。

「もうすこしだけ待って。反対側の手はこっちが温まってからだ」

 反対側は結構です! 

 そう口にするエネルギーは残っていなかった。

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