白雪姫は寵愛されている【完】

雪の日、その日は勉強するため図書館に行ったんだ。


本当は暗くなるまでするつもりだった。
…だけど、その日は人が沢山で。



私は仕方なく、ほぼとんぼ帰りになってしまった。


だけど帰り際…想像以上の雪が積もり、そのせいで電車が遅延になってしまった。



迎えが来てくれることになって、待ち合わせ場所に向かう、その途中だったと思う。──────傷だらけの赤髪の男の人がいたのは。



その人に傘を差した記憶がある。


もしかして、その人が…先輩だったって事…?



「…あ…あの…でも…、」



助けたというより…傘を差してあげただけ。


路肩にいた男の人。明らかに喧嘩後の人で、雰囲気も怖かった。


だから…目を瞑っているのを確認して、恐る恐る彼の肩に持っていた傘を差した。凄く痛そうだったから、ワイシャツの胸ポケットに持っていた大量の絆創膏を全部入れた。



……そんなことしかしていない。



救急車を呼んだわけでもなかったし、誰かに助けを求めたわけでもなく…怖くて、逃げただけ。助けたというより、放置に近い気がする。


「俺は昔から何かと難癖付けられることが多かった。

あの日も、先輩の女に手を出したとかで殴られた。…実際は逆で、女が俺に寄ってきただけだったけどな」



「そ、それで…」




あんなに怪我してたんだ。

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