白雪姫は寵愛されている【完】
「誰も見向きもしなかった。あれだけの怪我だ。誰か一人でも声を掛けてくれてもいいと思った。だが…面倒ごとに関わりたくないんだろうな。誰も気にしてなかった。
──────お前は別だったけどな」
また、笑う。
そんな先輩にドキッとした。
「っ…助けたわけではないです。ただ…、傘を……」
「周りはそれすらしなかった。それにあの時から俺は、」
そこまで言うと、ゴホンと咳払いをした。少しだけ顔が赤く見えるのは気のせいだろうか?
「……探していた。ずっと。
──────”白藤千雪”を」
私を…?探していた…?
「でも、どうやって…、」
「名前は分かったからな。年齢と中学まで判明していた」
「……そ、そう…なんです…ね…?」
先輩の表情は本気そのもので、調べ上げたという言葉に悪寒が走った。
な、なんでしょう?
今…一瞬ブルッとしましたけど…。
気のせい…ですよね?
「あ、あの…でも……名前だけでは…私かどうか…なんて…」
あの時、眠っていたみたいだったし…名前と姿が一致するわけではないですよね…?
先輩は顔を逸らすと呟いた。
「…起きてた」
「……は、い…?」
「あの時、顔見てた」
「え……!?」
突然のカミングアウトです。
「…細目で見てた」
そ…そんな、風には…!
見えませんでしたけれど…!
「その時に声を掛けようが悩んだが…ビクビクしてたから、辞めたんだ」
「そ…そんなとこまで…」
確かに近づくときも、へっぴり腰でした。
み、見られてたんですね…。