白雪姫は寵愛されている【完】


「はぁ?ばっかじゃないの?ここに呼んだのは、あんたが劇に出ないためよ。

ほんとなら王子をあんたにして、キモ男を姫にして本気でキスさせちゃう…っていうシナリオだったの!あんたに恥かかせるつもりだったのに!!

颯太様が姫役になるなんて…、だから、その計画を潰して。私が王子になることにしたの、」


「こんなことしなくても…、」



言ってくれれば、颯太くんと相談して変わっても良かったのに…。


「うっさいわね!!颯太様に聞いたわよ!!私にしてって!!それなのに…

”白藤じゃなきゃ俺もやめる”なんて言うのよ!?
それなら私が王子になる理由がないじゃない!!」



ガンッ、と扉を蹴られてしまった。
吃驚して離れる。


「暫くここに居なさいよ。終わったら…ふふ、気が向いたら出してあげる。勿論忘れて無ければ、ね?」

「っ!!まってくださっ…!」


開かない。力いっぱい開けようとしてるのに開かなかった。

外から鍵を閉められたのか、何か立てかけられているのか分からない。ただ、開かないって事しかわからない。



「……っ、そんな…、」



携帯なんて持ってない。

持っているは今着てる衣装ぐらい。
倉庫の中には蜘蛛の巣だらけの跳び箱と埃まみれのマット。


…どうにかして出ないと。


後ろにある窓なら出られそうだけど、鉄格子がある。触ってみるけど、かなり錆びついてる。…でも私が取れるようなものじゃない。

取れるならとっくに取ってる。扉の前の小窓は小さすぎて私じゃ通らない。



「だ、だれか!誰かいませんか!?」



今日は学園祭だからもしかしたら誰か気づくかも…そう思っていたけど。生徒もうろ覚えの場所であるここに、態々来るわけがない…、

もう、どうしようもなかった。


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