白雪姫は寵愛されている【完】
「白藤千雪…お前、俺の女にならねーか?」

「……え…?」


顔が凄く近いし掴まれた手も痛い。



「ご、ごめんなさ…!」


「ああ、俺の女になるなら髪切れよ。特に前髪…なんなら俺が切ってやる。手先は器用だからな」



───────ッ…、



「わ、わたし…大丈夫です…!」

「なら俺の知り合いに切ってもらうか。美容師の知り合いがいるからな」



離れない。
力が強い。


「っ…、大丈夫ですから…!私…」

「別に性欲処理として置いとくわけじゃない。俺の彼女としておいてやるよ。まあ…ぼちぼちヤるつもりだけどな?」

「だ…大丈夫です…!」

「そう言うなよ。すぐにってわけじゃない、ぼちぼちって言っただろ?」



話が全く通じない。



「ご、…ごめ…なさ…っ!」

「ここで俺が話しかけなかったら、完全にヤられてた。それを救ってやったのは俺だろ?」

「そ、れは…ありがとうございました…!で、でも、ごめんな…さ、」

「は?俺がここまで言ってやってんのにか?」



”また”何か…してしまったんだ。
私が変な風に期待させたんだ。


今日は…誰も、助けてくれない。


私から逃げ出したんだから。



「善は急げだな。美容室行くぞ」



引っ張られた。
抵抗はしたが、私には対抗できる力も何もない。



「…は、離してください!」

「あ゛?」



手を握られて、引っ張られて…今まで仁くんにされていた事なのに。その時よりもどうしてこんなに不安で、怖くて仕方ないのだろう?


「…手、手を…は、離して下さい…」


怖くて体が震えていて、声も震える。


「…フッ、それで抵抗してんのか?他の女でさえ、もっと抵抗できんぞ?」

「ッ…は、離して下さい…!」

「いいから早く来い」


抵抗してもなんでこんなに簡単に引っ張られるの。



やだ。嫌だよ。


助けて。




「───────仁くん、」



< 204 / 344 >

この作品をシェア

pagetop