白雪姫は寵愛されている【完】
「…なんでお前がここにいるんだよ」
頭の中は、仁くんの事だけでいっぱいだった。
他の事なんて考えられなくて、彼の事だけ。
仁くんはいつも来てくれる。
私が危険な事になってたら、駆け付けてくれる。まるでスーパーヒーロー。
でももう私は嫌われてしまったから。だからきっと来てくれない。
───────そう思ってたのに。
…どうして、
「………触るな」
どうしてここにいるの…?
仁くんはピンク髪の人の腕を掴んでいた。
「ッ…またかよ」
「…離せって言っただろ」
腕から音がする。凄く痛そうな、骨が折れそうな音。
「…チッ、わかったよ」
は…離れた。
ようやく…。
「早く失せろ。麒麟に見つかるぞ」
「言われなくてもそうする」
舌打ちをするとバイクで何処かへ行ってしまった。
それを目で追っていると、突然頭に何か被せられた。
「…きゃ!」
フルフェイスのヘルメットだった。
仁くんの後ろには大きなバイク。
「千雪、悪い。乗ってくれ」
「わ、わたし…乗ったこと…」
仁くんが私をバイクに乗せた。
「じ、じんくん」
「千雪、大丈夫だ。俺にしがみついてろ。絶対落としたりしない」
両手を仁くんのお腹へ、抱き着くように回すとバイクはゆっくりと動き出した。