白雪姫は寵愛されている【完】


「それを寄越せ」


──────怖い。
体に力が入らない。


「もう一度言う、」


壁に後頭部をぶつけた。
痛みよりも恐怖の方が勝ってる。



「それを寄越せ、白雪」

「───…っっ、」



力が抜けマスコットが落ちてしまう。


慌てて手を伸ばすが、先に取ったのは朔也くんだった。泣きそうになるのを抑えながら、震えながらシャツを掴む。


「わたし……本当に…作って…、」


嘘じゃない。嘘なんかじゃないです。

一つは仁くんが作った物だけど。もう一つはちゃんと私が作った物だ。



「それでも一度俺以外の男の手に渡ったのは事実だろ?」



朔也くんは私の手を振り払うとマスコットを握る。
ビリッ、破れる音が響いた。



「や……やめて…!」



もう一度引きちぎろうとする朔也くんの腕にしがみついたが、また振り解かれた。


なんで、やめて…お願い。
…やめてください、お願いだから。


何度も邪魔をする私に嫌気がさしたのだろう、壁に押し付けられた。



「黙って見てろ」



っっ……嫌…。


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