白雪姫は寵愛されている【完】
「異様に甘いなって思ってなかった?」
確かにお店で買うココアよりも甘いって思っていた。でも粉を溶かす物だから、甘いもの好きの私の為に一杯多めに入れてくれたのかと思っていた。
ミルクで作った甘くて美味しくて…飲んだら安心して眠くなるんだと思っていた。
「毎日少量ずつ睡眠薬を入れていたんだ。段々と眠りにつくのが早くなって、深くなっていっただろう?」
いつだったか…歯磨きをするのも億劫になるほどの眠気を感じたことがある。
身体が重く怠く、動くことが出来なくなって、朔也くんにベッドまで運んでもらった。…もしあの時、疲れだけじゃなくその睡眠薬のせいだったとしたら。
朔也くんがココアを作ってくれなくなって、眠りが浅くなったのも。その睡眠薬だったのなら。
寝つきが悪く、夜中に何度も目を覚まし、目に隈が出来るほどだったのが…全部そのせいだったなら。
──────全て辻褄があう気がする。
「寝ている白雪にあれこれするの本当可愛かったよ。何しても起きない白雪に何度手を出そうと思ったか…でも約束したからね。成人するまでって…だからキスだけで我慢してたんだよ。好きな子の身体目の前にして頑張った俺を褒めて欲しいよ」
唇に指が触れる。
「でも…これからは起きてる時に出来るんだね。嬉しいよ」
キスをされる。
私は黙ってそれに従う。
どれだけ心が拒絶しようとも。
朔也くんが抱きしめてくる。
「最初はこんな事してるって言ったら嫌われるかなって思ってたけど…良かった、好きなままでいてくれて」
震えている。ずっと。
私の中の朔也くんは、優しくて料理が出来て、欠点の無いお兄ちゃん…だった。
私が見ていたのは表面だけ。
実際はそうじゃなかった。
「白雪、俺の事好き?」
「…すき、だよ」
そう言うと微笑んだ。