白雪姫は寵愛されている【完】
病院
朔也くんが玄関で靴を履いている。
この後何処かに行くらしい。
「ごめん。本当は一緒にいたかったんだけど」
「気にしないで」
それをぼうっと眺めていた。
触れる手にビクッとする。
「白雪、外に出ちゃダメだよ。食べ物なら買ってきてるし、ケーキもあるからそれ食べて。欲しい物があるなら俺が買ってくるから。外出は絶対に禁止。いいね?」
「うん。いってらっしゃい」
朔也くんは笑って出ていった。
少し待ってから、ゆっくり玄関のドアを開けた。左右を見て、誰もいない事を確認する。今度はリビングから見える窓の方へ。白い特攻服が外を歩いているのが見えた。
黒い車に乗り込むと走り出す。それが見えなくなるまでジッとする。
──────行った。
急いで着替え、ショルダーバッグにマスコットを入れる。
いつ戻ってくるのか分からず、焦るばかり。震えている手を見ないようにする。
ふと鏡が目についた。
長い前髪に触れる。
もしこれを上げたらバレにくい…かな?
取り出したのは前に難波先輩が付けてくれたピン。
「……ッ、」
鏡に映る自分が怖い。このまま外を出歩かないといけない、そう思うだけで足がすくむ。
やっぱり少し怖い。
見られるのが怖い。
……でも、
左右に首を振り、家を出た。