白雪姫は寵愛されている【完】
頬に触れ、微笑む。



「早く…目を覚ましてください。私、言いたいことがあるんです」



今度はちゃんと言いたい。



「………何を、言うんだ」



聞きたかった声がした。顔を上げて彼を見た時、胸がはち切れそうになった。


「ッ…じん、くっ…ん」


起き上がろうとする身体を首を振って辞めさせる。

声を出せば涙が溢れそう。
言いたい事は沢山あるのに何も出てこない。


頭に手が乗った。ポンポンとされ溢れ出してしまった。


「よか…良かった…です…ほんとに…よかっ、」


またあなたの温かい手に触れられて。
また優しい声が聴けて…、本当に良かった。


「…私のせいで…ごめ、なさ……」


早く言わなかったから。私がもっと強かったなら。こんな事にならなかったはずなのに。

頬を包む手に涙が伝う。


「千雪のせいじゃない。だから…泣かないでくれ」


全部が優しくて愛おしくて。

朔也くんの時は嫌だなって思った事は、それなのに仁くんだと全然違う。

< 298 / 344 >

この作品をシェア

pagetop