白雪姫は寵愛されている【完】
ふらつく仁くんを支えながら病室を出る。
「仁くん…」
やっぱりまだ痛むんだ。
こんなにふらふらしてる…。
「──────…、」
声が…聞こえた。沢山人が行きかう中、色んな人の声が聞こえてくる中。あの人の声がした気がした。
……ッ、朔也くんの声。
足が止まり震えた。
「…千雪?」
「さ…朔也くんの声が…」
気のせいかもしれない。こんな沢山人の話し声がしているというのに。聞こえる方が可笑しいはずなのに。
”白雪”
あの声が聞こえてくる──────。
腕を引かれ大きな観賞植物の後ろへ連れてこられた。身体を密着させる。
「瀕死の状態にでもなってれば楽だがな」
…聞き間違いじゃない。
これは朔也くんの声。
「あーあ。これが千雪にバレたら朔也どうするのぉ?」
宏くんの声もした。何か食べながら言っている口調。
「バレるわけない。もう学校に行かせるつもりも無い」
「それって遠回しに言ってるようなもんじゃなぁい?」
「遠回し?バレるぐらいなら言ってやるよ。ジンは死んだって」
ドクン、ドクン。
心臓が何度も跳ねる。
震えが止まらない。
もし今日、この病院に来なければ…私はきっとその言葉を信じてた。
その時私は……何を糧に生きて行けばいいのだろう?
「千雪」
──────ビクッ!
耳元で声がして思わず体が跳ねる。
どうやら朔也くん達は行ってしまったらしい。
「俺が必ず守る。離れるな」
…仁くんは凄い人ですね。
さっきまで不安だったのに。
不安で泣きそうだったのに、その一言で安心出来ました。
手を引かれながら病院を後にする。着いたのは駐輪場。仁くんのバイクが置いてあった。
「あいつはまだ千雪が俺と居る事に気付いてない。俺の様子を見に来ただけだろう」
さっき歩いている時の会話で”私がいるから”そんな事は一言も言っていなかった。
「怖いと思うが…」
差し出されるヘルメットを受け取り被った。
「仁くんがいるから平気です」