白雪姫は寵愛されている【完】
「でも…白雪は来る気が無いみたいだし、強行突破かなぁ」
何かを投げ捨てる音。
見ると特攻服を脱いでいた。
腕まくりをしゴキゴキと手首を鳴らす。
…強行突破?
嫌な予感がする。
「千雪、何処かに隠れてろ」
そう言って同じように特攻服を脱ぎ私の肩に掛けてくれた。
それで何となく察しが付く。
今からするのは喧嘩だって事。
「ま…待ってください…」
さっき起きたばかりで、私の支えて歩けていた。
お医者さんは奇跡だって言う程で。
安静にするよう指示も出していた。
「駄目…駄目です」
ワイシャツを引っ張り何度も首を横に振る。
「わたしのせいで…またなるぐらいなら、」
またあなたが怪我する所を見たくない。
今度こそあなたが居なくなったら…?
「私…大丈夫ですから…」
精一杯微笑む私の唇に仁くんの指が当たる。
「千雪は嘘をつくのが下手なの知ってるか?」
下手…?
「笑い方が不格好になるんだ。泣くのを堪えてるのがすぐわかる」
「白雪。すぐ俺が助けてあげるから。待っててね」
朔也くんがそう言うと仁くんは私に背を向けた。
「仁くん…待って、!」
「言っただろ。守るって。辛かったら目瞑ってろ、いいな?」