白雪姫は寵愛されている【完】



「……そう、わかった」



離れていく。驚き顔を上げると、朔也くんの手には光る物がある。

折り畳みナイフのような物。


…な、んで?何処から出したの?
何を…するつもりなの…?


朔也くんは微笑んで首筋に当てる。


──────ッ、


「朔也くん!!」



ナイフを持つ手にしがみつく。
私の力じゃ抑える事も出来ない。


どうして?なんでそんな事するの?


刃先が少し当たった。それだけで血が流れた。もっと力を入れれば確実にこれの倍は出る。


「やめて!…お願い、やめて!」

「なら俺を選べよ!!」


朔也くんは泣いていた。


「白雪が他の男といるなんて考えたくも無いんだよ!俺以外を選ぶなら、俺はここで死ぬ!…そしたら、白雪は罪悪感で俺しか考えられないだろ?」


いや…いやだよ。私には朔也くんしか家族がいないんだよ…?


「お願いやめて!朔也くん!」

「なら一緒に帰ろ。俺とずっと一緒にいよう?」


微笑んだ。だけど首にナイフを当てたまま。


何が正解なの…?
どうしたら、前みたいに一緒にいれる?


「…ッ、おにいちゃん…」


分からないの、自分の事なのに。


「いい加減にしろよ」



ナイフが首から離れていく。仁くんが無理矢理引っ張っているから。


「お前…好きな女泣かせて何してんだ」

「まって…仁くん、血が出て…」


力を込める度に、お腹から血が滲み出ている。

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