白雪姫は寵愛されている【完】


「…お前に、俺の気持ちが分かるわけないだろ?俺が今までどんな思いで、白雪を見て来たと思ってる?俺が…白雪を、守ってきた。ずっとだ!俺はずっと…!」


「知るか。お前の気持ちなんて知りたくもねぇ。…守ってきた事に見返りでも求めてんのか?千雪を守ってやってきたから、好きになれってか?」


「……っっ、」


「お前がどうなろうが正直どうでもいい。…が、千雪が悲しむなら止める。これ以上、千雪を泣かせるな」



気気持ちが伝わったのか、ゆっくりと降ろしていく手。仁くんもホッとしたような表情。



「お前がいなければ済むだけの話だったな」



小さく呟いた声。
向いた刃は仁くんの方へ。

気が緩んでいたのだろう、突然の事に足がもつれかける仁くん。


そして──────、


グサッ、と刺さる鈍い音。前に仁くんが刺された時した音よりも明確に、鮮明に聞こえた。


それはきっと…、
私が刺された本人だからなのかもしれない。


腹部に刺され、その場に倒れ込む。



「千雪!!!」



抱きかかえてくれた仁くん。
見上げてるから、良く見える。

カランと床に落ちたのは血の付いたナイフ。



「…お、おれは…なにし、て…白雪…」



呆然とする朔也くんがぼやけて見える。


不思議…です。刺されたのにそんなに痛くないです。




「しっかりしろ!千雪!!」




何度も名前を呼んでくれる仁くん。


…悲しそうな顔、しないでください。私嬉しいんです。上辺だけじゃなく…こうやって守れたこと。


頬を伝う涙と共に、ゆっくりと瞼を閉じた。


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