白雪姫は寵愛されている【完】
昴くん達は車じゃなくバイクだったらしく、先に帰ったと言われた。
車に乗り込むと、いつもの運転手さんの鼻頭に大きな絆創膏が貼ってあるのが見えた。
「だ、だいじょうぶですか?」
「えっと…はい。ちょっとヘマしまして…」
アハハなんて笑う運転手さん。
…喧嘩、したのかな。
何となく察してしまった。
折角気を使ってくれたと思うのに。
怪我…と言えば仁くんの怪我は?
隣で座ってる仁くんの方を見る。視線に気づいた仁くんが無言でシャツを上げた。
吃驚して視線を逸らしたが、手首を掴まれ引っ張られる。触れたのは傷の痕。傷は完全に塞がっていて、縫われた所だけ残っている感じだった。
「もう大丈夫だ」
そうは言ってたけれど。
二度も縫った痕が見える。
やっぱりあの時…、
「─────千雪」
体を包む仁くんの匂い。
…仁くん?
「守るって言って、結局守られたのは俺だった…守れなくてごめん」
ゆっくり背中に手を回す。
「謝らないでください…私、仁くんの事守れたこと凄く嬉しかったです」
いつだって守ってくれた。だから…今度は私が守れたらって思っていました。
形だけじゃなくてちゃんと。