白雪姫は寵愛されている【完】

外から誰かが走ってる音がした。
その音は私の病室前で止まる。


「…ッ、千雪!」



盛大に開いたドア。息切れした仁くんと皆さん。


「千雪さん!大丈夫ですか!」

「わああ!白藤ぃ!死んだかとォ!」

「千雪ちゃん!俺の事分かるか⁉」


必死な姿に思わず吹いてしまった。
笑ってる私に吃驚してる皆さん。

深呼吸をして、微笑む。



「大丈夫です。ありがとうございます」



沢山心配かけてごめんなさい。

ダバーっとまるで滝のような涙を流し始めた颯太くん。


「お、おれぇぇぇ…しらふじぃぃ…」

「そ、そうたくん」


鼻水が凄い事になっていた。

直ぐにティッシュを取り、一枚ずつ渡していく。
なんだか最初の頃の私を見ているみたいだ。


仁くんの前で泣いたあの時の私。これは柔らかくないティッシュだから、少し痛いかもしれないけれど。


その後でお医者さんが来てくれた。


それほど深く刺さったわけではなかったので、五針程度縫っただけで済んだと言う事。三日間も寝ていたのは刺された事のショックだと思う、とのことだった。


「体力も問題ないようですし…今日中に退院できますがどうしますか?」

「…はい、お願いします」


一応診断書を作ってもらった。学校に提出するかもしれなかったので念の為。

荷物をまとめ、退院の準備をして病室を出ると、仁くんが壁に寄り掛かり待っていた。



「終わったか?」

「…待っていてくれたんですか?」



頷いた。

本当に優しい方です。
だから─────、


「ありがとうございます」


好きなんです。

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