白雪姫は寵愛されている【完】
…あっ。
難波先輩が怒ってる。聞かなくても、見ればわかっちゃうぐらい怒ってる。
「難波先ぱ…」
「千雪、」
伸ばした手を掴まれ、八神先輩の胸に引き寄せられた。
「あ、あの…!」
「…見なくていいし、聞かない方がいい」
そう言って、さっきよりもきつく抱きしめられた。
すごくドキドキしてる。受験の時、自分の番号がを探してた時みたいな感じだ。でもそれとはちょっと違う気もしてる。
緊張なのか、恐怖なのか。
自分の事なのに全然分からない。
…あ、あつい。
離れた先輩と目が合い、思わず逸らす。
顔が熱くて仕方ない。
パタパタと手で顔を仰ぐ────先に見えた。
首根っこを掴まれ魂の抜けかけたオレンジ色の男の人が。顔が凄く腫れている。
た、大変です…!
急いでポケットからハンカチを取り出し、その顔に当てる。
その動きに男の人は目をぱちぱちしてた。吃驚してるのかも知れないけど、腫れててよく顔が分からない。
その内泣き出した。
「あ…ご、ごめんなさい!痛かったですか?」
強く当て過ぎたのかも…。
彼は左右に大きく首を振った。
「違うんだ…優しさが…優しさが辛いんだぁあ…、」
「「だろうな」」
先輩二人、頷きながら言った。
「こいつは、文月 颯太。千雪ちゃんと同じクラスのやつ…一応」
八神先輩の溜息が出た。
続けて難波先輩も溜息をついた。
二人ともかなり深い溜息だった。
…フヅキ?
そう言えばクラスの女生徒が話してたような気がする。学校の先生も問題児だって言っていたような。
入学初日に喧嘩をして、朱雀の幹部になったとか。見た目も格好いいからかなり話題に上がっていた気がする。
本人が教室に来ることはほとんどみたいだけど…。
毎回遅刻して、毎回授業には遅れて…。そのせいで入学して一か月後に停学になった問題児さんが…文月 颯太だった。