白雪姫は寵愛されている【完】
店員はくねくねしながら、ケーキを箱に詰め始めた。

ああ…もう拒否出来なくなってしまいました…。



「合計で3080円になりまぁすぅ」



さ、さんぜんえん…。

本を諦めれば買えなくはない。流石にお釣り全部使うのは朔也くんに申し訳ないし…。


財布からお金を出そうとしたら、仁くんに止められる。そして代わりに出したのは黒いカード。



「これで」




店員はわざと触れるかのように仁くんの指に触れると、さっきよりもくねくねし始めた。



ブ…ブラックカード…?

…確か凄いお金持ちじゃないと持てないと聞いた事がある。それって、仁くんはすごくお金持ちって事でしょうか…?



「あっ!お客様ぁ!これ、よかったら…」



上目遣いの店員が出したのは、半分に折られてる紙。中に何か書いてあるように見える。


見た感じレシートじゃない。

これって…たまに朔也くんが貰う、連絡先の書かれた物に似てる。


「必要ない、」

「え…!?ち、ちが…!!」


何か弁解しようとする店員を無視し、仁くんに引かれ店を出た。振り返ると店員のガッカリしたような顔が見えた。


車に乗り込むと、また走り出した。


「じ、じんくん。あの…紙は…、」

「レシートの事か?」


…レシート。

仁くんは全然わかってなかったみたい。



「多分、あれは…」


「俺には必要ない。ゴミが増えるだけだ」



なんだか言いづらくなってしまった。……でも朔也くんもいらないと直接言っていたから、仕方ないのかな。


落とさないよう持ってくれているケーキの箱を見てハッとする。


「あ…あの、お金」



返さなきゃ。
全て買ってもらうなんて悪いですし。



「いや、いい」


「ダメです。こういうのはしっかりしないと…」



金の切れ目が縁の切れ目。
そう言うのはちゃんとするべきです。


三千円…か、

朔也くんに何に使ったって言おう?


本も買ってないのに、私がケーキ食べるために使った…なんて信じてもらえなさそう。


悩みながら財布を取り出そうとした。
けれどその手は仁くんに止められる。


「金はいい」


「で、でも…」


「…なら俺の言う事聞いてくれ。それでチャラにする」



言う事…ですか?


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