白雪姫は寵愛されている【完】
「あ!仁くんも食べましょう!」
私ばっかり食べるのも悪いもの。
パチンと両手を叩くと、仁くんは目を見開いた。そんな仁くんの手からフォークを奪い、口元へ。
「…いや、俺は別に」
なんて言ってた仁くんの口に、半ば無理矢理突っ込んだ。
「口の中がふわわ~ってなって、幸せになりませんか?」
「……っっ、」
─────…ま、って。
今…私仁くんになんて言いました…?それに、今使ってるフォークって、
一気に体中が熱くなった。
「ひゃあぁ!ご、ごめんなさい!!」
顔を隠す。
私…なんて事を…!自分が使ってたフォークを使って、変な事まで言うなんて…!!
何をやっているのかと自問自答を心の中で繰り返した。
何を、しているんですか!?私は一体…!確かに先程の仁くんは…子犬のようで可愛い、だなんて思いましたけど!実際は族の総長さんですよ!?
「…千雪、顔見せろ」
「む、むりです…!」
穴があったら入りたい、とはこの事。
「千雪、手を退けろ」
「お、お断りします…!」
顔が熱く、体も汗ばむ。覆う手にも汗が出て来てる。
仁くんの手が私の手首を掴む。
無理…です!絶対無理です!この手を退けるわけにはいきません…!どれだけ、手が汗ばんでいても…絶対に…!
「…退けろ」
「みゃ…!?」
さっきまでの決意は何処かにさようなら。
一瞬で目の前から消える。
力じゃ圧倒的に仁くんの方が上。
パクパクする私の口。仁くんがフッと笑みを浮かべる。
「顔、真っ赤」
「は…離してくださいぃ…」
「ふわふわしてたな」
こ、これ以上、傷口に塩を塗らないでくださいぃ…!