白雪姫は寵愛されている【完】


「あ!仁くんも食べましょう!」



私ばっかり食べるのも悪いもの。

パチンと両手を叩くと、仁くんは目を見開いた。そんな仁くんの手からフォークを奪い、口元へ。



「…いや、俺は別に」



なんて言ってた仁くんの口に、半ば無理矢理突っ込んだ。




「口の中がふわわ~ってなって、幸せになりませんか?」



「……っっ、」




─────…ま、って。




今…私仁くんになんて言いました…?それに、今使ってるフォークって、

一気に体中が熱くなった。




「ひゃあぁ!ご、ごめんなさい!!」




顔を隠す。


私…なんて事を…!自分が使ってたフォークを使って、変な事まで言うなんて…!!



何をやっているのかと自問自答を心の中で繰り返した。



何を、しているんですか!?私は一体…!確かに先程の仁くんは…子犬のようで可愛い、だなんて思いましたけど!実際は族の総長さんですよ!?



「…千雪、顔見せろ」


「む、むりです…!」



穴があったら入りたい、とはこの事。



「千雪、手を退けろ」


「お、お断りします…!」



顔が熱く、体も汗ばむ。覆う手にも汗が出て来てる。


仁くんの手が私の手首を掴む。



無理…です!絶対無理です!この手を退けるわけにはいきません…!どれだけ、手が汗ばんでいても…絶対に…!



「…退けろ」


「みゃ…!?」



さっきまでの決意は何処かにさようなら。


一瞬で目の前から消える。
力じゃ圧倒的に仁くんの方が上。


パクパクする私の口。仁くんがフッと笑みを浮かべる。



「顔、真っ赤」


「は…離してくださいぃ…」


「ふわふわしてたな」



こ、これ以上、傷口に塩を塗らないでくださいぃ…!


< 92 / 344 >

この作品をシェア

pagetop