心をいれかえた追放令嬢は転生してウサギのような聖獣になってイケメン王子たちにモフモフされます
(サイシアの手はやっぱり暖かくて気持ちがいい。人柄と生き様が滲み出ている素敵な手だわ)

 心地よい暖かさにアリアが身を委ね、目を瞑りながら頭を静かにサイシアの手に傾ける。そんなアリアの顔は本当に幸せそうだった。

 頭を撫でていたサイシアの手がゆっくりとアリアの頬を優しく撫でる。別にそこはイーリスに触られていないが、アリアは気にすることなくその暖かさに顔を擦り寄せた。すると手がぴたり、と止まる。

 アリアが不思議に思って目を開けると、目の前にはとても大切で愛おしいものを見るような、優しくでも明らかに熱のこもった瞳があった。その顔は、まさに男の顔そのものだ。それを見てアリアは思わず心臓が跳ね上がり、一気に顔が赤くなる。

(こ、この顔は、まずい……ただでさえタイプなのに、こんな顔されたら……)

「あ、あの、サイシアの手は優しくて暖かくて心地よいから大好き。でも、こ、これ以上は、ちょっと、心臓がもたない……」

 アリアの言葉に今度はサイシアが顔を赤らめる番だった。そんなサイシアを見てアリアは体を金色に光らせ、聖獣の姿に戻って部屋を飛び出していった。

(俺は何をやってるんだ、あのままアリアが目を開かなければ危うくキスするところだった。あんな可愛い顔されたら、止まらなくなってしまう……相手は聖獣だぞ、好きになっていいものなのか)

 サイシアはそのばにしゃがみ込み、大きく息を吐いた。


◇◆◇


 前世では自分のことしか考えず追放され野垂れ死んだ追放令嬢は、心を入れ替えて誰かの役に立ちたいと願い生まれ変わった。その生まれ変わった先では大切な人たちのために力を奮い、愛されながら今日もイケメンに囲まれてモフモフなでなでされながら生きている。

 その不思議な生き物が騎士から静かにだが確実に熱烈なアプローチを受け続け、自分を拾ってくれた少年と少年を守る魔法使いに祝福されその騎士と一緒になるのはもう少し先のことだ。

「人間じゃないのに人間と恋愛して一緒になれるのかって?だって聖獣だもの!」



< 26 / 26 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

幸せの青い小鳥を助けたら、隣国の王子に番になってくれと求婚されました

総文字数/23,335

ファンタジー45ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
継母と義姉に良く思われず実家に居場所のない伯爵令嬢シーラ・ランドベルは、領地内の外れにある小さな屋敷に追いやられひっそりと暮らしていた。シーラを嫌う義姉のキリルは、ことあるごとにシーラの元を訪ね、嫌がらせをする。 ある日、シーラが散歩をしていると、突然美しい青い小鳥が目の前に落ちる。瀕死の青い小鳥を拾い助けてあげると、小鳥は元気になり、シーラにすっかり懐いてしまった。 小鳥を拾ってから数週間後、シーラは突然婚約者に婚約破棄を手紙で言い渡される。絶望するシーラに追い打ちをかけるように、青い小鳥は突然シーラの元からいなくなってしまう。何もかも失ったシーラをさらにキリルは執拗にいじめるが、突然見知らぬ青髪の美しい男性がやってきて……。 「俺の番になってほしい。君を幸せにしたいんだ」 虐げられ令嬢のハッピーエンドなシンデレラストーリー。
この恋は報われないはずだった

総文字数/14,921

恋愛(純愛)13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
遠野楓(かえで)には密かにずっと憧れている義兄、響(ひびき)がいた。義兄と言っても、高校生の頃に母親の再婚で義兄になり、大学生の頃に離婚して別離した元義兄だ。 楓は職場での辛い恋愛に終止符を打って退職し、心機一転新しく住むはずだったマンションに向かう。だが、不動産屋の手違いで既に住人がおり、しかもその住人がまさかの響だった。行くあてのない楓に、響は当然のように一緒に住む提案をする。 響のその提案によって、報われない恋を封印していた楓の恋心は、また再燃し始める。 「こんなに苦しい思いをするなら、お兄ちゃんになんてなってほしくなかった」 ずっとお互い思い合っているのに、すれ違ったまま離れていた二人。拗らせたままの心の距離が、同居によって急速に縮まっていく。
眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛

総文字数/116,224

ファンタジー190ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「あなたのことはこれからどんなことがあっても守り抜きます。そして、幸せにしてみせますよ」 <旧題:目覚めた眠り姫は目覚めさせてくれた魔術師に恋をする> 当時の婚約者である王子をかばい、攻撃魔法を受けずっと眠り続けていたローラは、隣国の魔術師ヴェルデによって百年後に目覚めた。 目覚めたローラは婚約者や家族、友人が皆この世からいなくなっていることを知り、今の時代で自分は生きている意味がないと絶望した。だが、そんなローラへヴェルデは驚くべき提案をする。 百年も眠り続けた姫と姫を一途に思い続ける魔術師のハッピーエンドラブストーリー。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop